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嵐の前の静けさ〜踏みとどまったひと時〜-vol.40-

●1歳2ヶ月目●

彼の登場を連想させる迫力のある低音メロディー

黒いマスクとサイボーグ姿から聞こえる呼吸音は

『シュー コー シュー コー』

そう、彼は有名SF映画のアンチヒーロー

心優しかった彼がなぜ悪に染まったのか?

環境のせい?

ずば抜けた才能のせい?

結局は自分の選択で暗黒面に足を踏み入れたのだ

強いようで弱い

怒りや葛藤、絶望やもどかしさ、そして恐怖心

それらに飲み込まれたのだ

もがき苦しみ、心の闇と戦う姿はモクと似ている

そんな彼らにできるのは信じて待つこと

本人に打ち勝ってもらうしかないのだ

私たちは今境界線の上に立っている

それは平和な我が家と暗黒面との境目

私「どうする?モク」

モク「・・・・・おうちに帰ろう」

私たちは逃げるように我が家へ向かった

やっぱ家が一番やわぁ

夜中の尾追いはなくなった

やはり夜の散歩に原因があったようだ

(突き付けられた、独りよがり-vol.37-)

欲張りな私は

昼間の尾追いもどうにか減らせないかと考えた

特にひどかったのはお昼寝中に物音がした時

これを減らすことにした

物音がなぜ尾追いのスイッチになるのか?

答えは簡単だった

ただ単に驚き、腹が立つのだ

ならば驚かさなければ良い

そこで音が鳴りそうな時や動きたい時は

「モク」と一声かけてモクを起こすことにした

すると私の狙い通り尾追いはなくなっていった

この勢いで

体に触らせてもらう方法はないかと考えた

これしかない・・・

頼むぜ、おやつ!

おやつを片手に『待て』をさせて

人差し指で背中を”チョン”と触った

これをひたすら毎日繰り返した

そして触られることに慣れた頃

『チュッ』と言ったらモクの頭にチュー

『ギュー』と言ったらモクを抱きしめる

この2つも取り入れスキンシップに慣れさせた

何ヶ月ぶりかに抱きしめたモクの体は

いつの間にか大きくなっていた

成長の喜びと体に触れることができた喜び

なんとも言えない感情が押し寄せた

そんな幸せな日々を送っていたはずなのに

どうしてだろう?

気付けばあの時引き返したはずの境界線

やはり心の闇を晴らすのは無理なのか・・・

我が家に背を向けて歩き出すモク

アホファミリーは暗黒面へ堕ちていった

闇堕ちモクだブオーン