モクとは何もかもが正反対だった
道行く全ての人に愛嬌を振りまくその子は
『可愛い』と言われる度に満足げに歩いていた
私が落ち込んでいる時はそっと寄り添い
慰めと癒しを与えてくれた
そうした日々を過ごして12年
異変を感じて数日後
あっという間に帰らぬ子となった
何の根拠もない『乗り越える』という確信
横たわるその子を目の前にしても
そう信じて疑わなかった
だが、その確信が雪崩のように崩れ落ち
喪失に直面した私は灰のようになっていた
〈ペットロス克服法、虹の橋、生まれ変わり〉
自分を救うため
取り憑かれたかのように検索し続けていた
－それから3年－
心にあいた大きな穴は未だに埋まらない
おそらく一生埋まることはないだろう
“元気かな？会いたいな”
定期的に訪れる恋しさは私の気分を沈ませる
そんな時決まって聞こえるのは
「ゔぅぅゔぅゔぅぅ」という唸り声と共に
－－ダダダダダ－－と私の周りを走り回る音
モクお得意の一人キャッチボールだ
走りながらおもちゃを『ポイッ』とホームラン
自分で飛ばして自分でキャッチ
時には飛ばし過ぎて見失うという大失態も
そんな愛しい姿が目に入り
私は自然と微笑むのだ
モクなりの慰め方だろうか？
とても救われている
本当に私にとってかけがえのない存在だ
今日はそんなモクに
感謝の想いを綴りたいと思う
自由怪獣改め、思慮深き怪獣モクへ
いつも顔色を伺って機嫌をとっていますね。
私が。
・・・・・。
それでもモクなりに我慢をして、
頑張ってくれているの分かってるよ。
モクの優しさもちゃんと伝わってるよ。
散歩中、
距離があくたびに待っていてくれて
ありがとう。
眠る時、
温もりと安心を与えてくれて
ありがとう。
あ、間違えた。
嬉しい時、
とびっきりの笑顔を見せてくれて
ありがとう。
心の穴が広がらずに済んでいるのは、
モクのお陰です。
これからもポカポカと暖かい気持ちで、
キラキラと輝く日々を送ろうね。
ちなみに・・・
愛嬌を振りまいていたあの子とは違い
人が近づいてきた時のモクはこんな感じ
(撮影禁止)
キレ顔で吠えているにも関わらず
手を差し出してくる方がいらっしゃいます
大変危険ですので決して近づかず
この顔を見かけた方はただちにお逃げください
