●生後5ヶ月目●
モクが初めて見た芸能人は”関○勤さん”
と言ってもテレビの画面越し
モクには関○さんの面白さが分かるようだ
バックオーライと前進を繰り返しながら
画面に向かって吠え続けていた
その日以来、興味のある映像が流れると
大人しく、時には騒ぎながら
テレビにかじりつくようになった
そして、新たに始まったことがもう一つ
それは”遠吠え”だ
始めたばかりの頃はボリュームが小さかった
遠慮がちに遠吠えをするその姿はとても愛おしく
胸を射抜かれたアホ夫婦は
モクがアオーンという度に大喜びをしていた
それがダメだった・・・
今となっては後悔している
いや、どのみちやっていたかな?
その遠吠えは日ごとに上達し
私たちの耳を突き刺した
とてもじゃないが近くにはいられない
幼少期にキンキン声の祖母と同じ車に乗り
耳を塞ぎたくなるほどの
突き刺しを感じたことがある
モクの遠吠えはそんな昔の傷までを思い出させた
特定の音、寂しさを感じた時
一度始まると止まることを知らない
テレビの音はかき消され、モクの独壇場となる
急いで窓を閉め
騒音と虐待の疑いにハラハラするのだった
野生の血が強いと思われるモクの遊びはハードだ
小さな体で大きなぬいぐるみに覆いかぶさり
目をむき出しながら噛みつく
そしてそのまま唸りながらブンブンと振り回す
その瞬間モクは生き生きとしている
反対にアホ夫婦は化石のように息を潜め
“どうか巻き込まれませんように・・・”
心の中で祈るのだった
そしてその時の姿を見て
私の頭の中にはある情景が思い浮かぶ
それは山にいる野生のモク
立派に遠吠えをこなして
仕留め技術を駆使して生き延びていく
そして気付けば頂上で「てっぺんとったどー!」
どうしてもそんな姿を
想像せずにはいられないのだった