モクの背後に付きまとうフッサフサ
それは付いていて当然の
『尻尾(しっぽ)』
だが、そのフッサフサの存在は
モクにとって脅威でしかなかった
一般的に尻尾というのは
わんこの感情表現を担う大切な存在で
その動きを見ることで喜びや恐怖
どんな気持ちなのかを読み取ることができる
人にとってはそうかもしれない
でも、モクにとっては？
自分の感情と連動しているなんて
思いもしないだろう
モクのフッサフサは休むことを知らない
名前を呼んだ時やちょっとした再会をした時
目が合うだけで激しく揺らし
朝から晩まで喜びを表現してくれる
だけどいつからだろう・・・
揺れる尻尾が気になるようで
視界に入ると斜め上を見るように横目で
『じー』と見つめるようになった
この時はまだその程度だったが
これが尾追いの始まりに繋がっていたように思う
そして同じ頃
太ももからお尻のあたりを
唸りながら前歯でカチカチ噛むようになった
だが、ここで出っ歯の悲劇！
よーく見ると・・・噛めてないじゃん！
“噛み合わせが悪いからね、しょうがないよね”
なんてことを思いながら
ブラシをかけてあげることにした
するとちょっと撫でただけで溢れ出るフケ
“乾燥してるんだ、そりゃ痒いわ”
アホな私はそんな風にしか思わなかった
そのうち、そのあたりを触ると
ものすごい勢いで噛み付いてくるようになった
これがモクのSOSだなんて思いもせずに・・・
ハーネスを嫌がるようになったのと同じ
わがままがエスカレートしてるんだ
そう決めつけ
他の可能性なんて微塵も考えなかった
前に飼っていたわんこは
太ももを触られるのが好きだった
その為、私たちアホ夫婦は
わんこの太ももを触る癖がついていた
噛まれると知っていても自然と伸びる手・・・
毎日のように「いて〜」と嘆くのだった
