おままごとセットに取り憑かれた、幼き日の私
毎晩のように
プラスチック野菜を食べさせられていた両親は
ノイローゼ状態に陥っていたんだとか
そんな両親が考えたおままごと回避方
それは一人で取り組む
謎解きパズルを与える、というものだった
それは、やり出したら止まらない私の性格に
ぴったりのものだった
両親の作戦勝ちと言えるだろう
私は様々なパズルに挑戦した
中でも夢中になったのがジグソーパズルだ
寝ずに完成させたものは紙に貼り
アトリエにある絵画のように床に並べていた
ある日、その完成品の角のピースだけが
なくなっていることに気付いた
幼いながらに感じた小さな喪失感
1ピース欠けただけなのに
今までとは違う
別のものになってしまった気がしたのだ
近頃のモクは日によって調子の起伏が激しく
尾追いがひどい日は
『一体どうしちゃったの…?』
そんな問いかけをせずにはいられない程だった
しっぽを見ると歯型のような跡があり
あの悲劇がいつ起こってもおかしくない状況に
ハラハラとした日々を送っていた
旦那さんも同じことを思っていたようで
私たちは禁断のセリフを口にした
『最近、血が出るほど噛まないね』
・・・噂をすると現実になるというジンクス
我が家も例外ではなかった
-次の日-
激しい尾追いと共に発せられた
悲鳴のような鳴き声
そして、ひとり痛みに耐える後ろ姿
“かじったか・・・”
あのセリフが容赦なく現実になった瞬間だった
-数時間後-
立っている私の足元で
いつも通りの眼差しでしっぽを振っていた
その揺れるしっぽの間から見える赤茶色の塊
その姿がとても痛々しく胸が締め付けられた
『モク』を縁取る性格や仕草、尾追い行動
中を埋め尽くす色は日々変化をするが
縁取りが欠けることは決してない
もし欠けたらそれは『モク』ではなくなるだろう
尾追いはモクの一部
全部ひっくるめて『モク』
凹む自分を鼓舞し
私は今日も難解なモク解きに挑む
●赤ちゃんモクのプレイバックコーナー●
-part2-
日向でポカポカ
可愛い出っ歯で遠吠え
靴下を持って猛ダッシュ
木の陰に隠れた私の元へ一目散